歯科知識

予防歯科 歯みがきについて

歯磨き粉・クリームについて

一時テレビCMでも流行りましたが、最近市販されている歯みがき粉・クリームには、歯と同じハイドロキシアパタイトを含有しているタイプが多くなっております。

このハイドロキシアパタイトの効果の一つとして、歯と同じ成分であるために歯を磨く際の研磨剤として、歯を削りすぎない程度の固さであることを挙げることができます。

また、ハイドロキシアパタイトの表面性状が微細な凸凹であるため、汚れを吸着し、清掃力を高めることが可能と考えられます。

さらに初期のむし歯の部分に対して、ハイドロキシアパタイトにより再石灰化の促進を期待することができます。

しかしながら歯磨き粉・クリームは、テレビCMで見受けられるほど、歯ブラシの毛先の端から端まで塗るほど大量に使う必要はありません。

歯ブラシによる口腔清掃は、薬剤などで汚れを溶かすことではなく、基本は歯ブラシの毛先で汚れを機械的に擦り落とすことです。

歯磨き粉・クリームを大量に使用すると口の中が泡だらけになって、充分に磨いていないにも関わらず磨き終わったと勘違いして早く濯くことが多いようです。

最初は歯磨き粉・クリームを使用せずに、歯ブラシと水だけで磨いて、最後に仕上として、フッ素を含有する歯磨き粉・クリームを少量用いて仕上げ磨きをすることも一つの方法です。

なお、歯磨き粉・クリームのみの弊害ではなく、磨き方にも問題があるのですが、歯周病により、あるいは年齢と共に歯肉が退縮して歯根が露出している部分に対して、研磨剤の含有量の多い歯磨き粉・クリームを大量に用い、さらに固い毛先の歯ブラシでガシガシ横磨きをすると、歯根表面の一部が切ったように摩耗しますので要注意です。

歯磨き粉・クリームについても、かかりつけ歯科医院でご相談になることをお勧めいたします。

電動歯ブラシについて

最近スーパーやデパートや電気店などのお口の清掃関連グッズのコーナーにおいて、多数の電動歯ブラシが販売されるようになっております。
電動歯ブラシには、毛先が横や縦に細かく振動するタイプ、毛先が回転するタイプ、毛先が超音波振動をするタイプなどがあります。

また電動フロスや強い水流を間欠的に噴射するウォーターピックなどの口腔内清掃機器もあります。

最近の電動歯ブラシは、いろいろと考慮して設計・製造されておりますが、使い方を誤ると充分な清掃効果を発揮できないのみならず、かえって歯肉を痛めたり、歯が極端に摩耗してしまうこともあります。

また電動歯ブラシのみでは、全ての歯の全ての面を清掃することは困難で、歯と歯の接している面などは、デンタルフロスなどを用いての清掃が必要と考えられます。
電動歯ブラシの選択にあたっては、お口の中の状態、特にご自分自身の歯の状態あるいは歯並びの状態、歯周病の進行の状態や、詰め物や被せやブリッジや義歯(入れ歯)等の人工物の状態をも考慮する必要があります。

かかりつけ歯科医院で、電動歯ブラシのみならず口腔清掃法についてお尋ねになることをお勧めいたします。

間食(おやつ)について

子供さんの場合は、1回の食事で摂取できる量が少ないため、栄養補給としておやつの習慣がありますが、おやつ=間食(あいだの食事)であり、おやつ=甘い物ではありません。

甘いお菓子などを大量に、しかも長時間にわたり摂取することは、ミュータンス菌が酸を産生し続けることになり、常に口腔内のpHが低いままの状態となり、さらにむし歯が進行します。

おやつとして、甘い物、お菓子を考えるではなく、果物やサンドイッチやおにぎりなども、れっきとした間食と考えられます。

勿論甘い物でなくとも、間食後にも歯ブラシを用いた口腔清掃を習慣づけることは、むし歯の予防の観点からも非常に有効なことであり、外出先などで歯ブラシが難しい場合には、水やお茶などで口をゆすぐだけでも習慣づけをお願いいたします。

キシリトールについて

テレビCMでも流行っておりますように、キシリトールを甘味料として含有したガムやアメが、多数販売されております。

キシリトールは、白樺やトウモロコシなどを原料として作られる天然の甘味料で、むし歯の原因菌であるミュータンス菌が酸を作りづらい構造をしているため、むし歯を作らない甘味料とされております。

このキシリトールを歯磨き粉・クリームの甘味料として使っている製品もあります。

お菓子類には、このキシリトールと通常の砂糖の両方を配合してある製品もあり、キシリトールの効果が発揮できない場合もあると思われます。

キシリトール含有のお菓子類などを購入される際には、厚生労働省が許可する特定保健用食品であるかどうか、あるいはトゥースフレンドリー協会が認定する「歯に信頼マーク」の付いた製品であるかどうか、などをお確かめ下さい。

なお、キシリトールを食べたので、歯ブラシなどの口腔清掃は行わなくても良いというものではありません。

シーラントについて

歯にはむし歯になりやすい部分となりにくい部分があります。
むし歯になりやすい部分、つまりは歯ブラシが当たりづらい部分のことですが、一つは歯の咬み合わせの溝、もう一つは歯と歯肉の境目、そして歯と歯の接している境目の3カ所です。

このうちの咬み合わせの面の溝がかなり深い場合があり、歯ブラシを当てているつもりでも、溝の奥までは毛先が届かず、汚れが残ったままになることがあります。

そのため汚れが入りむし歯になる前に、この深い溝を埋めてしまうのが「予防填塞(シーラント)」と呼ばれる処置です。

この処置自体は虫歯の治療ではありませんので、歯を削るわけではありません。

一般的な治療手順としては、

1.唾液などが処置部分に入らないよう、あるいは処置薬剤が漏れたりしないように処置する歯のまわりを菲いゴムの膜で覆ったり、綿をロール状にした物で覆います。

2.薄い濃度の酸性の液などで、咬み合わせの溝に既に入っている汚れを除去したり、超音波振動する器具を使い溝の中を掃除します。

あるいは最近は、レーザーを照射することにより、溝の中の汚れを蒸散させる場合もあるようです。

3.透明、赤、白色などいろいろな色がありますが、プラスティック類似の詰め物を溝の部分に流し込みます。

4.光を当てて、溝に流し込んだ詰め物が固まれば処置は終了です。

効果については、このシーラントによって咬み合わせの溝からのむし歯の発生を抑えることができますが、歯を削らずに詰めていることから、時折端が欠けるなどする場合があり、この場合でも汚れが入っていなければ、また再度詰めることもできます。

なお、このシーラントもフッ素塗布もそうですが、きちんと口の中を管理できていないと効果が発揮されません。

薬を詰めたから、とか、フッ素を塗ったからと、口腔清掃を怠るととんでもないしっぺ返しが来ることがあります。

歯ブラシやデンタルフロスなどを用いた清掃法やおやつ=間食(甘い物ではありません)についても、一度歯科医院でご相談ください。

大人でさえ虫歯の治療は嫌なものです。

子供さんではなおさらです。守ってあげることができるのは、保護者の方だけです。

むし歯にしないようがんばってあげてください。

小帯について

小帯は、頬や唇や舌などの可動粘膜と、歯肉とを継ぐ紐状のヒダ・筋のようなもので、乳幼児で問題となるのは、上唇と上顎前歯部の表側の中央付近の歯肉とを継ぐ上唇小帯、舌と下顎前歯部舌側歯肉とを継ぐ舌小帯の二つです。

上唇小帯については、乳歯や永久歯が生える際に上唇小帯が邪魔になり、前歯の間に隙間が出来るとのことで、昔は生まれた直後に切断することも多かったようですが、ほとんどの子供さんが切断しなくとも年齢と共に小帯の位置が変り、何等の問題も生じないことが大多数です。

また時折転倒などによりこの上唇小帯が切れることがありますが、わざわざ縫合して繋げ治すようなことはせず、傷の経過を診るだけです。

舌小帯については、舌小帯短縮・強縮の場合は、これまた昔は哺乳の邪魔になるとか、構音障害になるとかの理由で、生まれて直ぐの頃に切離していた時代もあるようですが、哺乳とは関係ないとの考えもあり、切離せずに経過を診ることが多いようです。

しかしながら、授乳時にむせるとか哺乳量が少ない場合で、他に何等の事由も見つからず、かつ舌小帯短縮・強縮がある場合に、舌小帯を切離するとむせることが少なくなり、哺乳量が増えたとの報告もあるようです。

4、5歳くらいになっても舌の挙上がほとんど出来ないとか、舌尖を延ばしても上顎の切歯先端まで届かなかったり、下顎の切歯より前に延ばすことが出来ず、構音障害が認められる場合は、切離するなどの簡単な手術を行うこともありますが、非常に稀です。

上唇小帯・舌小帯とも、かかりつけ歯科医院でご相談になることをお勧めいたします。

遺伝について

歯並びなども含めて顔貌などは、遺伝します。

しかしながら遺伝のみならず、生活習慣などの環境も、子供さんの発育に対して大きな影響因子となりえます。

また、アレルギー性鼻炎などによる口呼吸によっても、歯並びが悪くなることがあり、遺伝のみではなく、出生後にも歯並びを左右する因子が多数あります。

では、むし歯や歯周病はどうでしょうか?

むし歯も歯周病も細菌によって起こる感染症であり、遺伝とは言いかねます。

乳児の頃の口移しによる食事などにより、むし歯菌や歯周病菌はご両親から子供さんへ感染しますが、細菌の存在のみではむし歯や歯周病は発症しません。

日頃の食生活や歯ブラシなどによる口腔清掃などの生活習慣を整えて、お口の環境を整えることにより、むし歯や歯周病の発症・進行を抑制することが可能です。

もし既にご両親にむし歯が多い、あるいは歯周病が進行している場合、日頃のご両親の生活を振り返ってみてください。

間食なども含めた食生活は、規則正しいでしょうか?

食事後の歯ブラシは、きちんと出来てますでしょうか?

定期的に歯科医院を受診して、むし歯や歯周病の予防に努めていらっしゃるでしょうか?

ご両親の生活環境が、そのまま子供さんに「遺伝します」。

ご両親自身がお口の中への関心が無い場合は、子供さんにも「遺伝します」。

ご家族皆さんで、生活習慣を改善して、お口の環境も整えて頂きたいと存じます。

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